リオ五輪七人制ラグビーで、ニュージーランド&フランス代表を撃破して4位入賞と大健闘した日本代表のユニフォームは「桜ジャージ」と呼ばれています。
しかしこのエンブレムよく見ると、日ごろ私たちが見慣れた桜とは少々違うところがありますね。
花見頃の満開の桜を見ると、花が咲くのは葉が出る前です。そして花が咲き終わってから葉が出てきます。
ところが、エンブレムを見ると花が咲いてる枝に葉がついてますね。木の葉が出てから花が咲くのは、古くから日本に自生する「ヤマザクラ」の特徴です。花札の桜としても有名ですし、田舎ではちょっと郊外に行くとまだまだたくさん見られます。
それに対して、私たちが毎年花見で目にする桜は「ソメイヨシノ」です。この桜は江戸時代の中期の1750年頃に江戸で、「エドヒガン系」×「オオシマザクラ」の組み合わせで作り出されたものです。
この「ソメイヨシノ」は、葉より先に花が咲き開花が華やかであることや若木から花を咲かす特性が好まれ、明治以来徐々に広まりました。さらに、第二次世界大戦後、若木から花を咲かせる事から爆発的な勢いで植樹され、日本ででもっとも一般的な桜となりました。
しかし、どうして短期間でここまで増やすことができたのでしょうか?結論から言うと「ソメイヨシノ」はほとんど全て枝を取っての「接ぎ木」や「挿し木」で増やします。こうすれば種子から増やすよりもはるかに早く苗木を増やすことができます。しかもこの方法だと親の桜の分身ですので、親と全く同じ特徴を持ちます。すなわち親の「クローン」となります。人間のクローンというのはSF映画の中だけですが、植物はこのように簡単にクローンを作ることができます。
植物の増え方には、種子で増える「種子繁殖」と、枝や茎などのクローンでふえる「栄養繁殖」の2通りの方法があります。栽培植物の場合は、「栄養繁殖」をすれば元の個体と同じ性質のものを簡単に増やすことができるので好都合です。そのため「栄養繁殖」が可能な作物は出来るだけ「栄養繁殖」で増やします。
元々日本の野山に自生するヤマザクラは、木によって花の咲く時期がまちまちなので長い期間花を楽しむことができます。その半面、皆が一斉に同じ時期・同じ場所で行う「花見」には向きません。ところがソメイヨシノは殆どの木が元の木から増やしたクローンなので、ほぼ同じ時期・同じ場所で咲きます。一斉に咲き一斉に散っていきます。この様な性質から「花見」にはうってつけですし、同時に桜の開花予想の標準木としても利用されていますね。
しかしこのクローンの性質故、問題も指摘されています。
ソメイヨシノは他のサクラよりてんぐ巣病に弱いとされており、クローンであるため全ての株が同一に近い特性を持ち、病気や環境の変化に負ける場合には、多くの株が同じような影響を受け、植樹された時期が同時期ならば、同時期に樹勢の衰えを迎えると考えられています。21世紀に入り樹勢の衰えが目立つようになったため、戦後に大量に植えられた本種の寿命が到来しつつあると危惧されており、ソメイヨシノ60年寿命説が唱えられることもあるそうです。
その対策として公益財団法人・日本花の会は、桜の名所作りに適した品種として樹勢が強健で鑑賞性が高い複数の品種を推奨して配布している。従来はソメイヨシノもその人気から配布対象品種であったが、上記のようにてんぐ巣病に弱いため、2005年度から苗木の配布を、2009年度からは販売も中止し、代替品種として、てんぐ巣病に強く花や開花時期がソメイヨシノと類似する「ジンダイアケボノ」の苗木の配布を開始し植え替えを推奨しています。このため、ソメイヨシノに替わって日本全国でジンダイアケボノの植樹が行われるようになっています。
もしかしたら遠くない将来花見はソメイヨシノではなく、ジンダイアケボノで行われるようになっているかもしれませんね。
